「使い所が全くわからない」と言われたSwitch

は? (´・_・`)ノミ うるせぇSFP Module投げつけんぞ
俺にとっては最高のスイッチなんだよ。ただし変態向けであることは認める。
Hardware:
- CRS3XX系でお馴染みのMarvell製SoCを搭載したモデルで、non blocking wire speedなスイッチ。
- SFP+ が 4 Port
- Gigabit Ethernet Portが1つで、PoE給電が可能。
- ACアダプタを2つ付けられるようになっていて、冗長化が可能。1つでも動く。
- 100ドルぐらいで買える圧倒的なお値打ち価格 \(-o-)/
- Fanless!
一般常識を備えるインフラマンからは疑問符を投げかけられる仕様だが、一部の変態は狂喜する仕様であり、具体的には次のような視点がある。
いけてなくない?派としては、おそらく「アップリンクポートの帯域を考えると実質使えるのは3ポート以下、ギガビットポートなんてマネジメントか電源供給にしか使えないじゃん。アップリンク用にQSFPがあってしかるべきでは」というところであろう。うん、わかる。
一方、ハイパーバイザーが2台あり、iSCSIなどのストレージが1~2台あるような、中小あるいは一般のご家庭レベルのスモールスタートの仮想環境では、この仕様が効いてくる。CRS305-1G-4S+INを2台用意すれば、冗長性をもった足回りが、極めて低コストに作成できる。このような要件下で、安い10Gスイッチはあまりなかったので、そこに収まったと見るのが妥当だと考えられる。
次に、アップリンクへのトラフィックはギガビットレートのWAN向け通信のみであるが、ローカルのトラフィックは多いといった、さほどヒステリックでない場所に収めるには、10Gbpsポートを増やすのに非常に費用対効果が高いということ。大抵のスイッチでは、Gigabitポートが24個以上にSFP+は2か4ポート、それ以上となると一気に全ポートがSFP+のような極端に振れる仕様のものになるので、間を埋めるものがない。
そして安価な「TAPデバイス」を探す人にもうってつけということが上げられる。10GbpsでSNORTやパケットキャプチャーをやりたい人に良いと思う。ただし注意点が1つある。CR2XX系では、複数系統をTAPデバイスとして設定することができるようなのだが、CRS305だけではなく、CRS3XX系では、SoCの仕様だと思うのだが、1つしかミラーポートを作成することができない。
使い勝手はCRS328と全く変わらないので、違和感なく使えます。
で、結局買いなのか?!
いいから買え (´・_・`)9m
10Gスイッチの価格破壊モデルである。もはやご家庭に設置するのは義務と言ってもいい。
オーオタ向けである
ここからは、ある種の宗教に関するポエムなので、頭が変になりたくない方はお読みいただかないほうが良い。ネットワークエンジニアの視点で書かれているので、電子電気工学的な裏付けはあまりない内容です。
ネットワークオーディオやSTBなどのネットワーク通信を主に用いるビジュアル環境では、映像や音声品質にコンポーネント間が影響し合うノイズの影響が無視できない。そこで効果的なのが、各機器間が電気的に橋渡しして回ってしまうようなグラウンドループなどをなるべく減らすことなのだが、カッパー線を用いるLANではなく、Optical Fiber Cableを用いたネットワーク環境を構築することが、実は効果的なのである。SFP+が4ポートあって100ドルぐらいのCRS305は、この用途に極めて適しているのだ。DC電源が使えるというところもポイントだろう。12-57Vと動作範囲が広く、ピュア向けのPSUを使えなくもないからだ。
この思想でいく場合、必ずしもSFP+である必要はなく、実際、MikrotikではCRS106-1C-5Sという、SFPを5ポート備えた下位機種があり、CRS305の半額ぐらいで買える。第一義的にはこのモデルが安上がりとなるので、一般的にはこれを選べばよいだろう。ただし、幾つか落とし穴がある。QCA8511が搭載されているのだが、CPUとの内部バンド幅が狭く、使い方を誤ると性能低下が極端に生じることと、筐体が安っぽいプラスチック製なので、環境温度や制震対策に気をつけなければならない。
Fiber Optic Media Converterにまつわる話
Media Converterをオーオタ視点で使う場合、以下の要素がある。
- シングルモードなのかマルチモードなのか
ファイバーで電気的に分離したあと、何が品質上影響するかと考えると、コンバーターの電源環境とともに、モジュールやケーブルの品質に起因する、伝送上のジッター。この視点でいくと、シングルモード一択となる。オーオタの間でシングルモードが経験則として選ばれるのは、理屈から言うと、これが要因。
ちなみにコンバーターやSFPモジュールを使用する際には、機器に定められたケーブルの最短長が存在するので留意する必要がある。10~20kmまでのシングルモード用モジュールではおおよそ2mとなっているものが多いが、これより短いケーブルを使ってしまうと減衰しきれず反射などによるジッターが増加してしまい、悪影響を及ぼしてしまう。アイソレーション目的だからと0.5~1mなどの短尺ファイバーケーブルを用いている例を見かけるが、適切ではない。全くリンクアップしないと言うことはそうそうないために使えてしまうことが多いので誤解されているが、 本来これらの短尺ケーブルは、光ファイバーパッチパネルに収容した幹線をラック内の各コンポーネントに分岐するために使用するもので、つまり総延長は1mより長いから使用できる。
- SFPスロットの有無
SFPスロットがあるものの場合、モジュールを好きに選べる利点がある。先のジッターの件で言うと、半導体レーザーにもいろいろな種類があって、モジュールにも数百円のものから数十万円以上というピンからキリまであるので、それを各々の思想と財力によって選べるという利点がある。
一方、スロットがない物の場合は、適合するケーブルさえ用意すれば使える手軽さというものがあるだろう。ただし、スイッチに直収する場合、もはや殆どがLCなので、SCのコンバーターの場合はSC-LCケーブルを用意する必要があり、変換アダプタを用いるのはジッターという視点からは推奨されない。CRS305に収容する場合は、自ずとLCになる。
- 2本のファイバーで伝送(送受信が分かれる)するのか、1本で伝送(多重化)するのか
原則として通信には方向というものがあり、イーサネットでは双方向で通信する必要がある。その通り道はどこなの?という話だが、コネクタの形状とは別に、何本で送受信するかで方式が異なる。オーオタ的視点から言えば、1本で伝送するものは推奨できない。周波数が異なるものを通すとはいえ、物理的に1つの導体に異なる光が混在する状態となるからである。またこのタイプは原則として、双方向で送受信できるようセットで設計された機材を使う必要があるので、BiDi SFPという特殊なモジュールや、対応するConverterを2台セットで使わざるをえなかったりすることも、推奨されない理由の一つとなる。多重化自体は極めて合理的な方法なのだが、オーオタには常識が通用しないのが困る。当ブログの画像では1本にみえるケーブルが使用されていますが、これは1つのスリーブに2つのファイバーが通されている特殊な形状のもので、2芯タイプ。
- LFP(Link Fault Pass-through)やFEF(Far End Fault)といった機能はあるのか
Media Converterを用いた運用では、ファイバーがリンクダウンしたのか、カッパーがリンクダウンしたのかについて、特別な機構で判断するようにしないと、ずっとつながっているものとしてパケットが送られ続けてしまうことが起こってしまう。それを改善する機能がLFPやFEFと呼ばれる機構だが、安価なノーブランドのMedia Converterでは、この機能がないことが多い。オーオタ的視点で言えば、オーオタは使用していない機器は電源を落とすくせがあるので、この機能がなければ不要なパケットが送出され続ける可能性があり、悪影響となるので搭載機を選ぶべきである。CRS3XXはLFPなどにきっちり対応しているので、対応コンバーターと繋いだときに正しく動作します。※対応しないスイッチも多い。Pr○Curve 1810Gとか
- カットスルー(Cut-through)はできるのか
安価なMedia Converterは、内蔵されたチップでごく限られた量をバッファリングして送受信するモード(ブリッジ)だけしかできないものが多い。利点は、エラー訂正や再送出制御をConverterで完結できる場合があるので、ホストのNICには正しいデータが常に送られることを期待できることが上げられる。
反面、デメリットとしては、ジャンボフレームが利用できないパターンが多い。イーサネットフレームの最大サイズである1518bytesまでしかバッファが無いからだが、ジャンボフレーム未対応と明記されているものは、これに該当すると考えて良い。次に、ジッターの問題。メディアコンバーターで一度イーサネットフレームを受けるということは、極小ながら遅延が生じるということでもある。実使用上、受け側が結局はバッファリングして音声信号にする実装がほとんどだから、それが問題になることは殆どないと思われるけど、オーオタレベルの機材ではこれが聴感上、表面化する可能性がある。
一方、カットスルーは、文字通りそれらの処理を電気的にスルーする。結果、ジャンボフレームが使えるか否かはスイッチとホストのNICに依存し、遅延はほとんどなくなるので、ネガティブな影響を受けなくなることが期待される。Media Converterが通常想定している長距離ならまだしも、ホームネットワークレベルの伝送でエラー訂正が必要な状態になることも考えにくいので、エラー訂正による利点を必要とするとは思えないというのも、理由の1つに挙げられる。
- 速度固定にできるかどうか
100Mbps固定設定ができるかどうかということを指す。なぜ100Mbpsなのか?だが、まず現在のストリーミングサービスやハイレゾリューションフォーマットに対して10Mbpsでは不十分なので100Mbpsであるということと、伝送帯域が増えるほどに必要電力が増える傾向にあり、ノイズの影響も受けやすくなるからで、100Mbpsで問題ないのであれば、1Gbpsのインターフェースを持つ機材でも、100Mbpsで使用したほうが良いケースが見られるためである。安価なコンバーターではオートネゴシエーションしかできないものが多く、例えば、カットスルーではない設定にしたとき、Apple TVのようにホスト側でリンクアップ速度を変更できない機器との組み合わせでは、RJ-45側を100Mbpsに固定にしたくてもできないことが想定される。
エンドポイントで100Mbps固定に出来る場合などで、1000BASE-Xのメディアコンバーターを使う場合は、コンバーターをブリッジ動作させることで可能となるが、光ファイバー側は1000Base-Xに、カッパー側は100Mbpsとなるので、フローコントロールが必要となる。ブリッジ動作させた際にメディアコンバーターがその役割も担ってくれれば良いが、担えない場合には、スイッチでやるのか、End to Endでやるのかを、状況に依り適切に運用しなければならない。フローコントロールを行わないとパケットロスと再送が発生してしまい、結果的に音質や画質の低下に繋がる。光ファイバーでつなげば盲目的に音が良くなるに違いない!というのは妄想であり、簡単な話ではないのだ。
カットスルーで使用する場合には、モジュールおよびコンバーターの選択が重要となる。例えば、1Gbps用のモジュールを使用すると、一般的には1Gbpsでしかリンクアップできない。1Gbpsおよび10Gbpsで使用できるデュアルレートモジュールというのもあるが、 100Mbpsで使用したい場合には、100BASE-LX用などの適切な通信用モジュールを使用する必要があるのだが、今となっては社会的ニーズの少なさから入手性はあまり良くなく、単価も高い傾向にあるので、カットスルーにこだわる場合は、SFPモジュールスロットがない100Mbps用として販売されているメディアコンバーターを、そもそも選択したほうがよいかもしれない。特に1000BASE-X用として販売されているコンバーターは、100BASE-LXのモジュールを刺しても動作しないケースが多い。とはいえ、カットスルーに拘ることが本当に必要なのかどうかという面もあり、100Mbpsに拘ることがメディアコンバーターとして旧世代のハードウェアを掴む可能性があるので、電力効率やノイズ対策の面で優れているとは限らず、どちらが良いかは一概には言えない。
低速なほど音質的に良い結果が出るという経験則を紐解くインフラマン側の理屈としては、Interfrace Spacingといわれるフレームの送出間隔が、リンクアップ速度が高いほど時間軸でみると短い間隔となるために、伝送品質の影響が多くでやすいので、低速な方が様々な面でマージンが生まれるということに起因しているのではないかと考えられる。HDMIでも同様に、10.2Gpbsの1.4世代から18Gbpsの2.0世代になると、単純な伝送帯域の問題だけではなく、HDCPの送出間隔がシビアになるために、ケーブルなどの各コンポーネントの品質要求が上がる事情がある。
しかし良いことばかりでもなく、100Mbpsで使用する場合には注意しなければならないことがある。デュプレックスミスマッチと呼ばれる現象で、全二重、半二重が揃わない状態になることを言うが、この状態になると、片方から見ると問題なくつながっているように見えるが、もう片方からは正しくつながっておらず、半二重通信状態となり、送受信データにコリジョンと言われるエラーが大量に発生することとなる。結果、ジッターが大きく増えてしまい、音質的な影響が計り知れないものとなるので、必ず設定を両端で揃えることを心がけなければならない。
ええ時代になったなぁ
S○tMがSFP付きのオーディオファイル向けスイッチを出したが、これまで述べたような効用を期待した製品の一例になる。一般的にオーディオ用というと、電源周りやアナログ信号に関するクオリティが他とは異なる思想の製品なので、RJ-45のパスは別として、SFPのラインに、正直その効果が劇的に現れるのかは疑問が残るが、SFPではモジュールの電源供給がスイッチから行われているという点があるため、オーディオグレードのスイッチとして作られていれば、レーザーのジッターに影響が現れる可能性はある。しかしインフラマン的には理屈から考えると、オーディオ向けとしてブランディングされているネットワーク機器に費用対効果として納得できない点が多いので、CRS305がお手軽スイッチとしておすすめできますね。
余談だが、今はSFP+を搭載したコンシューマールーターがあるので、ホームユースでもファイバーネットワークのみでインフラが作れる。N○tgearなどのハイエンドモデルがそうですが、あれはAnnapurna LabsのAplineシリーズが搭載されているからで、あのSoCに直収できるインターフェースがあるから。NASなどにSFP+対応品が増えているのもその流れなので、いい時代になったなと思いますね・・・